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2013年6月9日【番外】畠山製菓を取材させていただきました

 

 

奈良市街北部を東西に流れる佐保川は(大和川水系支流・途中から南流に変わる)古くは万葉集にも詠われた美しい川です。

また、この川は、昔から地域の人々に愛され、守られてきた川でもあります。

春になると毎年、両岸何キロにも亘り咲き誇る桜並木が本当に見事で、この時を待ち兼ねた花見客で堤は賑わいます。

今年も私たちを楽しませてくれた桜並木は、もうすっかり葉桜となりましたが、新緑の鮮やかさと川のせせらぎが、今度は初夏の香りを運んできてくれました。

 

間もなく奈良に、盆地特有の厳しい夏がやってきます。

そんな、初夏の香りが心地良いこの日―。

 

今回の取材にご協力いただいたのは、そんな佐保川のほど近く、創業80年の老舗『畠山製菓』さんです。

創業者であるお爺様から受け継がれた製法を守りながら、今日もその技を磨いておられます。

創業以来、手焼きにこだわったお煎餅とベビーカステラが自慢のこちらのお店で現在看板を守っていらっしゃるのは、三代目ご当主の畠山幸仁(はたけやま こうじ)さんです。

交差点の角に建つ店舗は、店先でお煎餅を焼く造りになっていて、ご当主の職人技がお客様にも間近で見ていただけるようガラス張りになっています。

その立地から、信号で足を止めたご近所さんと、お煎餅を焼くご当主が気さくに挨拶を交わす場面も・・・。

店内に一歩足を踏み入れると、昭和50年代の商店のような、どこか懐かしい雰囲気と同時に鼻先をくすぐる甘くて香ばしい香りに包まれます。

 

店内では、ご当主のお母さんとお嫁さんが、焼きあがったばかりのお煎餅をひとつひとつ手作業で袋詰めしておられました。

 

『いらっしゃい。』

 

明るい笑顔で出迎えていただき、早速取材開始です。

カメラ片手にご当主のいる作業場へ―。

2畳分くらいある小上がりに、焼き鳥を焼くような焼き台が一台、その前に、紺色の作務衣姿のご当主が腰を据えておられます。

お煎餅を焼く焼き型が焼き台の上に4台。道具は、お相撲の行司の方が持つ軍配団扇を大きくして、手元がヤットコの柄に似たような物です。

 

『今は格子煎餅を焼いています。』

 

その様子をカメラに撮りながらお話を伺うことにし、作業は黙々と続いていきます。

ご当主の傍らに、大きなたらい程もあるボウルに生地が作られています。

どの道具も、かなりの年代物とお見受けしました。

中の生地は、見た目にはご家庭でホットケーキを焼く時のアノ感じです。

『材料はどういったものですか?』

『小麦粉や砂糖・卵などです。』

『具体的には?』

『それはちょっと(笑)。』

 

教えてはいただけませんでしたが、それは誰かに知られてレシピを盗まれては困るというような気持からではなく、受け継がれたレシピを守るという思いからなのだと感じました。

年代物のボウルから生地を一掬い(ひとすくい)して焼き型に流し、台の左端に乗せます。

右端の焼き型を台から下ろすと、焼きあがったばかりのお煎餅が。

美味しそうな香りに、思わず顔がほころびます(笑)

焼き型を、台のうえで転がすように返しながら順番に右へ右へ―。

そしてまた、生地を流した焼き型を左端へ乗せる―。
見ているだけなら、私にも出来てしまいそうな錯覚に陥るほどですが、実はこの作業、かなりの重労働だそうです。単調なこの作業は延々と続きます。

また、その日の気温や湿度などで、焼き台から型を下ろすタイミングは微妙に変わるそうです。

その焼きあがりを見極めるのは、長年の『経験』―。

このお店で使われている焼き型と焼き台は、創業時からずっと大切に使われ、受継がれてきたものだそうです。

 

『今はガスで焼いていますが、創業当時は炭で焼いていました。台や型は、手入れをしながらではありますが、創業して以来ずっと、今も同じものを使っています。今は、なかなかこういった道具を作ってくれはる職人さんも少なくなってしまったからね、貴重な道具ですわ。』

 

 

先代から受け継がれたレシピや道具を大切に守り続けておられるご当主の心意気に、心から感動しました。

それと同時に、ご当主の素晴らしい職人技を発揮するために不可欠な、昔ながらの道具作りを継承していく担い手さんが少なくなっている現実。

歯痒くて寂しい思いです。

厳しい修行を積んだ職人さんの『経験』だけが作りだせる逸品は、厳しい修行を積んだ職人さんが作る『道具』にも支えられているのに…後継者不足という切実な壁があることを、あらためて痛感します。

昔堅気なご当主が焼きあげるお煎餅やベビーカステラには、先代からの根強いファンの方も多く、取材中にも、お客さんが入れ替わり立ち替わり訪れます。

思い切ってちょっと意地悪な質問をしてみました。

 

『機械化しようとは思わないのですか?』

 

失礼な質問だとは十分承知していたのですが、
『焼き台が一台、焼き型が4台では、お煎餅やベビーカステラをひたすら焼いていても限界があるのでは?』

 

焼く手を止めることなく、ご当主は笑って

 

『機械化?考えたことないなあ~。』

 

『たしかに、あまりに大量のご注文をいただいた時などは、対応しきれないのでお受けできないこともあります。仰る通り、朝から晩まで焼いていても、焼ける数は限られていますから。』

 

『でも、お煎餅に関しては、賞味期限が2カ月と長いので、早めにご相談いただければ、たくさんのご注文にも出来る限り対応させていただいてます。』

 

ベビーカステラは賞味期限が短いため、あまりに大量のご注文は難しいとのこと。

 

『機械化がナイなら、例えば作業場を拡張して職人さんを増やすとか?』

 

ちょっとしつこいとは思いながら、さらに聞いてみました。

 

『地元のタウン誌にも時々取り上げられたりしておられるし、口コミのお客さんもいらっしゃるし、この規模ではもうしんどいのでは?』

 

『ほんまにありがたいことです。うちみたいな小さな菓子屋でも記事にしていただけたり、遠方からでも足をお運びいただけたり。でも、機械入れたり人を入れたり、それは考えてないんです。』

 

『なんでもかんでもデジタル化やとか言うて、今は便利な時代やからね。僕のしてることはこの時代には逆行してるのかもしれんけど、それでもきっと何か残せるんちゃうかなあ~、そう思うてね。』

 

もっと楽に仕事する方法や、もっとお金儲けに繋がる方法があっても、敢えてその道を選ばず、手焼きに拘り、受け継がれた本当に良い味を、昔からの伝統や製法を大切に守りながら仕事にする。本当に素晴らしいことだと思います。

この味と製法を、是非とも次の時代に引き継ぎたいと、心から思います。

 

『お客さんからね、ここのお煎餅は日が経っても風味が変わらないとか、湿気にくいってお言葉をいただくことがよくあるんです。それは、ひとつひとつ手焼きで、丁寧に焼きあげているからなんですよ。』

 

お買い求めいただいたお客様に、美味しく召し上がっていただけること。

便利な時代に甘えないご当主は、ただひたすらに、今日もひとつひとつ丁寧に、変わらぬ味を生み出します。

畠山製菓さんは、創業時からご家族でお店を盛り立ててこられました。

そして、忙しい中でも、佐保川の美化運動などにも積極的に参加され、この街や地域の方々との関わりをとても大切にしておられます。

お店には、味はもちろんのこと、そんなご一家のお人柄に触れるのが楽しみで、足しげく通われるお客様がけっこういらっしゃいます。

取材中にも、お散歩途中に立ち寄られた感じの初老の男性が、野球カステラを手にされて、少し雑談をされると楽しそうに帰って行かれました。
お散歩が『ついで』なのか、野球カステラが『ついで』なのかはわかりませんが、あの方の日常には、きっといつも畠山製菓さんのお菓子
があるんだろうなあ~(笑)。

その後も、手土産をお求めに来られた女性が、詰め合わせる中身に迷っておられると、細やかにお話しを聞きながら、皆さんでとても丁寧に
対応しておられました。

贈る側の気持ちに寄り添ってくれる、心配りが温かいお店って嬉しいですよね。

こちらのお煎餅は、いわゆる【米菓】に属するお煎餅ではなく、小麦粉・卵・砂糖などで焼きあげる、ほんのり甘くて香ばしいお煎餅です。
サクッとした食感と、口いっぱいにひろがる優しい甘さが絶妙で、小さなお子さんからご年配の方まで、どんな年代の方にも食べやすく、親しみのある味わいです。

これぞまさに職人技!!と脱帽するところは、必ずまた食べたくなってしまうところ(笑)。

畠山製菓さんの味が恋しくなる瞬間が必ずあって、お店の温かな雰囲気もまた恋しくなって、良心的なお値段設定にお財布もくすぐられ、私もついつい足を運ぶリピーターの一人です(笑)。

お遣い物にさせていただくことも多いのですが、先様にもいつもお喜びいただいております。また、オリジナルの焼き印を作って自分だけのお煎餅を焼いていただくこともできます。

例えば、御結婚の引出物にお二人の名前を刻印したり、会社や学校の名前を刻印したり。

オリジナル焼き印は買い取りが条件となるため、ある程度の枚数を注文するほうがいいかとは思いますが、一度作成していただければ焼き印はずっとご使用いただけます。

ご予算は、焼き印の作成料金(1.5万円ぐらいから、デザインや文字数で変動)とお煎餅の代金になりますので、ご希望の方はお店に是非ご相談を!!

こんなに素敵なご当主が焼きあげる美味しい焼き菓子、私個人としてはより多くの方に味わっていただきたいとは思うのですが、現状、畠山製菓さんではインターネットでのお取扱いをされておらず、直接お買い求めいただくか、お電話でご注文して頂くかのどちらかです。

現在、ホームページとオンラインショップをご検討中とのことで、少しずつご準備もされているということです。

近いうちには、全国の皆様にインターネットでご購入いただける日が来るかもしれませんね。

ホームページが開設されたら、阿吽堂からもご紹介せていただきますのでどうぞお楽しみにお待ちくださいませ。

最後の頁に、商品のラインナップをいくつか簡単にまとめてみましたので、お取り寄せをご希望の方はご参考になさってください。

素朴で優しい、ほんのり甘くて香ばしい、そしてどこか懐かしい―。そんな畠山製菓さんのお煎餅とベビーカステラ。

本当に美味しいので、是非一度ご賞味くださいませ。

取材に快くご協力くださいました畠山製菓の皆さまに、心より感謝申し上げます。

そして、この度も私の拙い文章に最後までお付き合いくださいました読者の皆さまにも、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

(カメラ/文:阿吽堂 小島 裕子)